精神科の診療報酬改訂はひどいことになりました。
減算というのは要するに例外規定なので、数字としては表に出てこないでしょう。
単価が減れば設備投資や職員の雇用がしにくくなり、患者さん一人にかける診療時間も短くなってしまいます。
まあ私たちのような弱小医療機関はまだ何とか命はつなげるでしょうが、いちばんの問題は総合病院の精神科です。
これら、身体疾患を持った患者さんに必須の医療機関では、精神科が廃止されつつあります。不採算部門として切り捨てられるのです。
今回はとくに多剤併用がターゲットになっています。
精神科では多剤併用が諸悪の根源のようにいわれています。しかし、私たちは儲けようと思って多剤併用にしているわけではありません。院外処方では薬を多種類だしても医療機関での点数は同じです。
多剤併用には根拠があります。理由は3つ。
ひとつは、単剤最大量では効かない場合。治療薬はそれぞれ使用できる上限が決まっていますが、患者さんの体質によってはもう少し上乗せすれば症状を抑えられるというケースは非常に多いのです。使用量の上限は法的な縛りですから、似たような薬を併用するしかありません。
ふたつめは、効果を高めて副作用を分散させたい場合。実は、内科の高血圧治療ではふつうに行われている方法です。例として抗うつ薬の組み合わせがあります。たとえばSSRIと三環系の組み合わせ。レクサプロだと不安は抑えられるが意欲が出ないので小量のアモキサンを混ぜるような例です。併用が良いというエビデンスは無いと言われますが、患者さんによっては確実に有効です。
三つ目は、とくに抗不安薬についていわれることですが、日本人の症状の特殊性です。日本人はどのような疾患でも非常に不安が強く出やすいので、どうしても抗不安薬を多く使わなければならないことが多いのです。これは、あるセロトニントランスポーターの遺伝子が日本人だけ特殊であることが見つかるなど、生物学的に解明されつつあります。
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