2014年の国家試験で実際に出た問題です。出題者は c を正解にしたいようですが、現在では b も間違いとは言えません。
1 アルコール依存症の治療について適切なのはどれか。
a 断酒会は匿名参加が原則である。
b 断酒より容易な節酒を目標とする。
c 離脱症状にベンゾジアゼピン系薬を投与する。
d 脳症の予防としてビタミンDを大量に投与する。
e 抗酒薬を患者に知らせず家族に食事に混ぜさせる。
1970年代〜1980年代の Vaillant の研究によって、アルコール依存症患者は節酒には戻れないという考え方が広まりました。しかし現在の依存症治療は断酒から節酒にシフトしつつあります。
ただしこれはすべての患者が節酒可能になるという意味ではありません。いままで節酒は不可能と考えられていた者の中に、それができる者が含まれているということです。「アルコールの問題があるので何とかしなければならない」という点は変わりありませんし、断酒をしなければならない患者さんも確実に存在します。
おそらくこれを出題したのは依存症治療に詳しくない人だと思います。依存症の専門家であれば「節酒できないという考え方は今ではかならずしも正しくないから、選択肢として入れない方が良い」と思うはずです。
まあ、医学生向けの教科書には「断酒が必要」と書いてありますから、大丈夫でしょうけど。
キーワード: