幻聴とは実際には存在しない音が聞こえることをいいます。精神医学における主観症状のひとつです。
一般に、そこにないものを知覚することを幻覚と呼びます。幻聴はその一つです。ほかには幻視・体感幻覚・幻臭・幻味などがあります。これらと異なって実際には存在するがそれを別のものと捉える症状が錯覚です。
さて、あるネットの掲示板に「幻聴が止まらなくて困る」という相談がありました。それに対してある人は、
「電磁波犯罪やテクノロジー犯罪などにあっている気がします。幻聴を聴かせる軍事技術が存在するようですよ。」
と答えていました。
幻聴を聞かせる軍事技術というものを聞いたことはありません。しかしある薬物の依存・中毒状態を作り出すことによって幻聴を聞かせることは原理的に可能です。個体差があるので誰でも100%、とは行きませんが。また、脳の聴覚領域に電気刺激を加えることによって幻聴を作り出すこともできます。ただ、そういう手法を持ってしても、今の段階で、外部の人の思い通りに幻聴を作り出すまでの精密度は到達できないでしょう。
なお、実際には以下のような事例が米国でありました。
ある患者の幻聴について調査したところ、ラジオ放送が頭の中で聞こえているという結論になりました。その人はラジオ放送局の近くに住んでおり、その放送が脳内で直接受信されているということだそうです。
ありうる推測としては、電界強度が非常に強いことから人体内で検波が行われてその信号が聴覚路のどこかに入ったということでしょう。一般に2種類の金属が接している部分が半導体として作用、つまり非線形素子(この場合はダイオード)として働く場合がありますから、人体内で同じように働く場所があるのかもしれません。具体的には思いつきませんが。
この場合、電波は振幅変調(AM)である必要があります。複雑な電子回路なしに周波数変調(FM)やデジタル変調を聞くことは不可能なのです。
一般に患者さんが幻聴を訴える場合、統合失調症などの精神病性の疾患のほか、薬物のによるもの、せん妄(意識障害)やある種の感染症など、様々な原因を考えなければなりません。強いストレスによって起こる場合すらあります(解離性幻聴)。
余談ですが、電波と電磁波は物理学的な意味では全く同じです。ただ、法律上の定義があり、電波法では「電波とは周波数300万メガヘルツ以下の電磁波を電波という」と定められています。これは、無線通信に使われる電磁波という意味です。