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人口対策について

2019年7月29日

現在の日本は超高齢化社会であるが、かつて、人口を調節するプロジェクトが存在した。今もあるのかどうかは知らない。

私が小学生の頃の話である。祖母の家に遊びに行くと、コンドームがたくさんあった。それが何のためにあるのか、私にはまったくわからなかった。

祖母はもともと助産師であったが、実際の分娩に関する仕事を辞めてからは保健所の非常勤職員になり、乳児の育て方の指導をやっていた。

それとは別に「家庭生活研究会」という組織に所属し(その組織を作った一員でもあるという説あり)、日本の人口調節に関する仕事をしていたのである。役所の委託を受けて、ということらしい。その役所がどこかはわからない。母の話によると「国」だということだ。そのため、家族計画の教材としてコンドームをたくさん持っていたのである。

この「家庭生活研究会」は今でも杉並区に存在する。ウェブサイトを見てみると、

「本会は、昭和29年、有志の女性方の賛同を得て、女性ばかりで発足いたしました。 当時、わが国では人口問題が政治、経済、社会の重要課題となっていたことにも鑑み、私たちは、まず母性保護と健全な家庭作りの立場から家族計画普及運動に取り組みました。」

とあり、人口の調節が主たる目的であったことがはっきりと書いてある。

しかし現在はそのようなことはしておらず、障害児のサポートを仕事としているようだ。

いっぽう、当時の厚生省の人口問題研究所から「昭和30年度事業報告書」というものが出ている。ここには以下のようにある。

・・・・昭和29年の出生率は人口千につき20で我が国はすでに世界の低出生率国の一つに加入したといってもよいわけであるが・・・・生産年齢人口の激増は、労働市場に対する圧迫をきわめて深刻化しており・・・・就業者数の外見的膨張にもかかわらず、低所得の不完全就業層は最近とみに累増傾向を示し、完全失業者数もまた上昇気配を濃くしている。人口問題は雇用問題を焦点としていよいよ重大さを加えており、当面並びに長期にわたって人口対策の確立を強く要望している。・・・・

「人口対策の確立を強く要望している」の主語が不明であるが、これは厚生省もしくは国、あるいは「一般的にそう思われている」(英語でいうと They say ...)ということなのだと思う。

確かに、当時の出生数のグラフを見てみると、この頃の数値は下がりつつあるが、現代と比べればまだまだ高い。

もちろんベビーブームの当時に生まれた人たちが労働市場を圧迫していたわけではない。彼らはまだ乳幼児なわけであるから。失業者が多いのにこれ以上人口が増えてはたまらん、ということである。

で、その後実際にはどうなったか。ベビーブーマーたちは中卒で就職し、大都市では大量の安い労働力を手に入れられるようになった。そのため復興しつつあった日本の経済がその速度を増し、敗戦国では西ドイツと並ぶ経済大国となったわけである。

出生率増加の本当のひずみはそこから何十年も経って現れた。高齢化社会・そして超高齢化社会である。現在は4人に1人が高齢者。近い将来は3人に1人が高齢者となり、さらに増えていく。

そのいっぽうで出生率は下がりっぱなしである。一般的に生活水準が上がればそれを保つために生む子供の数は少なくなる。しかしこんにちの日本では少子化の本当の原因はそれだけではない。

それは、子育てそのものがきついからである。親が関わらなければならない要素として、教育・地域・学校がある。「教育」というのは説明するまでもないが進学のこと。「地域」というのは町内会や自治会と言われるもの。子供に関しては育成会と呼んでいるものもある。運動会(学校とは別)やお祭りなど、田舎ほど活動が忙しく悩みのタネである。はっきり言って不要だ。「学校」とはPTAのことであり、これも教育とはまったく別のものである。都会では当たり前のことであるが、田舎でも「地域」「学校」が嫌な親はあえて都会の私立に子どもを通わせたりする。

子育てには費用がかかる点も見逃してはならない。いまは猫も杓子も上級学校に行こうとする。本来はそんな必要はないのであって、高校進学は全中学卒業者の2割、大学は1割程度が行けばいい。整式の二次方程式が解けないどころか分数の四則演算もできない高校生など要らない。教育関係者は失業するだろうが、税金と親の金で合法的な若年失業者を養っているのが日本の現状である。

いまと結婚や子育ては幸福よりもリスクと不安をもたらすものである。人口問題を調査研究している機関がどういう事を考えているのか私は知らない。しかし、人口減少を憂うのであれば、親が何を苦痛としているのかということをよく調べないと見当違いに終わるであろう。この点申し訳ないが政治家はアテにならない。子育てをしたことがないのではないかと思えるような発言が多々ある。金をばらまけば解決する問題ではないのである。


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