場所は川口リリア・音楽ホールでした。
セットリストです。
森さんと仲道さんはどちらかというと柔らかい演奏をするタイプです。相性は非常に良いと言えるでしょう。また、ふたりとも大きなホールよりも小ホールに向くアーティストです。
いっぽう清水さんはきっちりとした演奏をする人です。ひとつのミスもありませんでした。しかし他の二人と合わないということはまったくなく、きわめて理想的な合奏をしていました。さすがはベルリン・フィルの首席奏者です。
今回はシューマン中心のプログラムとなっています。シューマンの曲はテクニック的には高度なものは必要ありませんが、表情付けが非常に難しいと感じます。
今回の中で特に演奏が難しかったのは「おとぎの絵本」でしょう。正確に言えば演奏が難しいというより、曲が難しいのです。不可解な音が随所に使われており、聴衆の立場としても聴くのが非常に疲れました。
この曲が作られた1851年頃からシューマンには奇行が見られるようになっています。「指揮棒を落としてしまう」「曲が終わっても指揮を続ける」「考えを伝えられなくなる」などと記録にはあります。しかし様々な恐怖症や幻聴はすでに1840年代からあり、この頃から症状の増悪が始まっていたのでしょう。曲がおかしいのはそのためと思います。このあと1854年の自殺企図、入院と続いてきます。神経梅毒と考えられているそうです。
今回も素晴らしい演奏を聴かせてもらいました。クラシック音楽界は残念ながら停滞期に入っているというのが私の印象ですが、素晴らしい演奏家はたくさんいますので、もっと陽が当たれば、と願っています。