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支配人の痛み(小説)

2021年9月13日

NMB49劇場の支配人である金子は、メンバーにつきまとう厄介なファンに悩まされていた。

警察に相談しても
「証拠がなければ動けない」
と言われ、途方に暮れていた。

金子はつぶやいた。
「これはもう、あの男に頼むしかない」

深夜、金子が劇場に残って片付けをしていると、片隅に背の高い男が立っていた。
その男が煙草を吸っているのを見咎め、金子は声をかけた。
「ここは禁煙ですが....」
「あんたが支配人か?」
「そうですが....もしかして....!」

金子は事情を説明した。男は黙っていたが、話が一区切り着いたところで口を開いた。
「この劇場で始末しろ、と言うのか?」
「そのとおりだ。他のファンにも、ストーカーはこのような報いを受ける、ということを知らしめたいのだ」
「公演中に消せと言うことか? しかし武器を持って入ることはできないだろう。金属探知機があるはずだが」
「そこまで把握していたとは恐れ入った....そうなのだ。そこであなたには、換気のためにドアを開けた時を狙って欲しい」
「難しい注文だが....では、20万ドルを振り込んでくれ」
「おお、引き受けてくれるか」
「ただし、あんたは少し痛みを伴うかもしれない」
「???」

13日後の劇場。「告白の空砲」公演が始まった。開始30分後、金子は換気のため劇場のドアを10分間開けた。そしてまさに閉じようとした時、自分の頭に軽い衝撃を感じた。
触ってみると、手に赤いものが付いた。程なく劇場内は悲鳴に包まれた。厄介オタが倒れたことはすぐに知らされた。
「しかしどうやって....そうか、俺の頭に弾丸を当てて、その跳弾で....ゴルゴ今田、なんて奴だ....」


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