チームK公演の翌日は渡辺貞夫さんでした。久しぶりのジャズです。現状では海外のアーティストはまず来てくれませんので、いきおい国内のアーティストのコンサートに出かけることになります。
今回はいわゆるビッグバンドです。
セットリストです。古典的な曲が多いですが、渡辺さんのオリジナルも入っていて、懐メロ一辺倒にはなっていませんでした。
渡辺さんも88歳。2018年12月に今回と同じシリーズのコンサートを横浜で聴きましたが、そのときと同様演奏の衰えは全く感じられませんでした。MCのときにしばしば名前が出てこなくて、メンバーに「誰だっけ?」などと尋ねていました。しかしこれは正常範囲の物忘れでしょう。
米国のサックス奏者に比べると、渡辺さんの演奏はやや淡白に感じられます。しかしこれは若い頃からのもので、彼の個性なのです。
サックスは音の質を自由に変えられる楽器です。管弦楽器は多かれ少なかれそうですが、とくにサックスはその自由度が大きいのです。どのように音を作るかというのは演奏者によってかなり違います。たとえばウェイン・ショーターの音とジョー・ファレルの音は全く違っているでしょう。
渡辺さんは演奏に余分な小細工を入れないので、その分音作りに集中できていて、聴く側は安心感が持てます。車の運転で言えば余計な動作をしないのです。おしゃべりや脇見をせず全神経を運転に集中させる。そんな例えでおわかりいただけるでしょうか。
ミュージシャンは何歳まで活動ができるのでしょうか。もちろんプロとしての活動が可能なレベルで、ということですが。私が調べた限りでは107歳のコレット・マゼ(フランスのピアニスト)がいます。日本では二葉百合子が90歳で現役バリバリですが、和楽器の演奏者などは100歳超えがいそうな雰囲気です。
高齢ミュージシャンの大敵は脳血管障害など運動神経にモロに影響が出る疾患でしょう。キース・ジャレットが脳梗塞で再起不能になったと伝えられたのは2018年。そういえばオスカー・ピーターソンも晩年はヨレヨレでした。
渡辺貞夫さんも健康で長く活躍してほしいと思います。