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はじめてFreeBSDを使ってみようというかたへ

2007年5月15日

この文章はFreeBSDは未経験のかたを対象に書いていく.私自身FreeBSDの初心者なので,間違いがあったらご指摘いただきたい.

FreeBSDとは何か

FreeBSDを使う理由 − なぜLinuxでなくFreeBSDなのか −

私は当初Linuxを使っていた.しかし,2004年からFreeBSD中心にくら替えした.理由はいくつかある.

企業の思惑に左右されない

Linuxは当初ボランティアが開発していたものであったが,現在は多くのディストリビューションが営利企業から発売されている.そのため,どう考えてもユーザーが望んだとは思えないような内容のものが見受けられる.営利企業は儲かることを優先するから,ユーザーの立場が今後どうなっていくのか,見極める必要があろう.FreeBSDであれば,そのような心配は無用なのである.

一度覚えた知識が有効である期間が長い

Linuxはなぜか仕様変更の周期が速い.若い人にはそれでもいいのであろうが,年寄りにはきつい.FreeBSDもバージョンアップは行われているが,ユーザーを惑わすような変更はほとんどない.

動作が安定している

FreeBSDを使い続けようと思った決め手のひとつが安定性である.LinuxとFreeBSDを同時に使用していた時期があったのだが,あるときLinuxで数GByteのファイルをコピーしながらGimpで画像処理をしていたところ,Gimpが突然終了してしまった.自分が苦労して編集していた画像が一瞬にして消えてしまったのだ.しかもこの現象には再現性があった.FreeBSDでも同様のことをしてみたが,Gimpがエラーを起こすことはなかった.要するに大きな負荷に対する強さが違うのである.Linuxは安定していると言われてはいるものの,FreeBSDに比べると明らかに劣る.MacOS 8や9のフリーズに悩まされてきた私にとって,FreeBSDの安定性は何物にも代え難いものがある.

アプリケーションのインストールが簡単・種類が豊富

portsとpackagesはFreeBSDにおいて,アプリを自動でインストールする仕組みである.packagesはRed Hat系におけるRPMファイルと思えばよい.ひとつのアプリが一つのファイルにまとめられているものである.

感心したのはportsである.これは,自分のマシンの中にports collectionという,アプリをインストールするための「手順」のみを入れておき,それによって必要なアプリをインストールする仕組みである.これはOSをインストールするときに入れておくことができる.portsの種類は1万以上に及ぶ.

たとえば自分がmozillaをインストールしたいと思ったら,ディレクトリ /usr/ports/www/mozilla に入り,make install と入力すればよい.あとはportsが手順に従って必要なファイルをネット上からダウンロードし,コンパイルしてくれる.いちいちアプリの公式サイトなどを探す必要がないのだ.portsにはゲームマシンのエミュレーターやDVDのリッピングソフトまである.

なお実際に使ってみればすぐわかることであるが,FreeBSDとLinuxでは使えるアプリケーションはほとんど同一である.両者の差は結局カーネルの差であって,操作方法はほぼ同一である.極論すれば,設定ファイルや,起動のプロセスなどが違うのみである.所詮どちらもPC UNIXであるから,慣れてくればこのような違いはあまり気にならなくなる.

実用になるか

FreeBSDがデスクトップマシンとしてどの程度実用になるか,ということについては,Linuxの場合と同様と考えて良い.しかしLinuxと同様,印刷やマルチメディア関連など,WinやMacに比べて明らかに弱い分野があるし,UNIX系OSの使用経験がまったくないならば,相当量の勉強が必要である.

FreeBSDそのものは,けっして難しいものではない.ただ,いま書籍やweb上にある入門者向けの情報は,ある程度UNIX系OSの知識と経験があることを前提として書かれているのである.Linuxの超初心者向け入門書はWinやMacしか扱ったことがない人でも理解できるように書いてあるが,FreeBSDの解説書はそういうものが見あたらない.

Linuxよりも面倒なものもある.たとえばプリンタの設定である.printtoolなどというものはなく,/etc/printcapなどを自分でいじらなければならない.もっとも現在はCUPSが使えるので,あまり心配がなくなってきた.

日本語が標準でサポートされていない.たとえば多くの日本語版Linuxでは

$ less ファイル名

と入力すれば,日本語のファイルであればきちんと日本語で表示されるのであるが,FreeBSDでlessコマンドを使うと,日本語は文字化けしてしまう.lessのほかにjlessをインストールしておかなければならないのである.ロケール(何語に対応するかという設定)も自分で指定しなければならない.そもそもFreeBSDには「日本語版」とか「ドイツ語版」などというものが存在しないのである.

このようなことをFreeBSDの不親切さととらえるのは間違っている.FreeBSDは,基本的な構成をできるだけシンプルにしているのである.それは何のためかと問われれば,性能の安定のためである.

日本語を入力したり表示したりする機能をはじめから組み込んでおく必要はない.それは,使う人だけがあとからインストールして設定すればすむこと,という考えなのである.よけいな機能の組み込みは,トラブルを増やす原因になるからである.

こういうことはFreeBSDのポリシーだ,と考えるしかない.そんな面倒なのはすべてイヤ,という人は,普及しているOSを使えばよい(その代わりウィルスだのフリーズだのいろいろなトラブルに見舞われるわけだが).

どういう人に向くか

WindowsやMacOSはブラックボックスになっているため,アプリケーションを使いこなすことはできても,そこから一歩奥に踏み出そうとすると案外難しい.工学系の専門知識がある人ならば何ということもないのであろうが,素人にはそのギャップがものすごく大きいものに感じられる.いっぽうFreeBSDはやればやるだけ理解が進むため,勉強しやすいし,その効果も実感しやすい.

参考文献

最後に文献をあげておく.私が使っていて役立っているのは以下の書籍である.ただし,これらさえ読破すれば何も知らない人がFreeBSDをバリバリ使えるようになるわけではない.これらの本を読むことはFreeBSDを使うための必要条件であって,十分条件ではない.

あとはUNIX一般に関する書籍で基礎知識を勉強するとよい.

雑誌については,毎月出ているFreeBSDの専門誌は日本にはないようだ.技術評論社からFreeBSD Expertというのが出ているが,たぶん年1回ぐらいなのだろう.アスキーからはBSD Magazineが発行されている.こちらは年に4回ずつだ.あとはUNIX系の雑誌を見ることになる.


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