私は女性アイドルグループはAKB48グループしか知らないが、つねづね疑問に思っていることがある。
それは、男性問題が発覚したメンバーを排除してしまうという運営側の姿勢だ。
優れた能力を持つ人間がいたとする。その人は何らかの形で周囲の役に立っていたとしよう。その人が本業と全く関係のないところで失敗したとき、どうすべきか。そのことと背景について十分に調査して、改善が望めるならばもとの役割に復帰させるのが正しいやり方である。もともと役に立っていた人なのだから。
具体的な例をあげよう。
2021年春、当時=LOVEのメンバーであった佐竹のん乃がパパ活をしたとして事実上の解雇になった。
佐竹のん乃がプライベートでどういう人であったかは私は知るすべもないが、=LOVEのメンバーとして有用な人であったことは間違いない。だが運営側はユーザー(ファン)側に詳しい説明をすることはなく、彼女は芸能界を引退するということになってしまった。
そもそもパパ活をするような人は育った家庭環境に何らかの問題があることが多い。親の本人への無関心や共感のなさなども含めて、広義の虐待を経験していることがほとんどだ。それにより人はある種の虚しさを感じながら成長することになり、大人になってからその気持ちを穴埋めする行動をしようとするのだ。
その方法はパパ活だけではない。そもそも芸能人になること自体も虚しさから抜ける手段である。親から十分認めてもらえなかった人が芸能界に進み、親以外の人からの注目を受けることによって充実感を得ようとすることは非常に多い(承認欲求という)。
あるいは、人のお世話をする仕事に就くこともある。代表的なのは看護師や保母などだ。一種倒錯した感情の処理方法だが、他者の世話をすることによって気分の安定を図るのである。
風俗産業に行く人もいる。これは家庭内で性的虐待を受けた人に多いが、そのことは自分の意志でやったことなのだというふうに記憶を書き換えるため、自ら風俗に入るのである。
佐竹のん乃の行動について、スタッフは彼女の背景にあるものまで調査をしたのだろうか? 上のような事情がもしあったとしたならば、ある程度の活動自粛は一時的にやむを得ないとしても、適切な心理療法などを受けさせて回復が見込めれば活動を再開させるべきであった。
私のこのような意見に対して「パパ活云々よりも女性アイドルが男性と付き合うことが駄目なのだ」という人もいよう。それについては「アイドルに恋愛禁止を求める人の特徴」に書いたことが私の反論だ。
芸能界に限らずこんにちの日本は人の過ちに対して非常に厳しい。厳密に言えば「世間が過ちと思っているもの」だが。指原莉乃も書いているではないか。「間違う事に厳しい世間 / 間違う事で大人になれる」と。彼女は佐竹のん乃が再起不可能な過ちを犯したと理解したのであろうか。
ほかにも似たようなものはある。たとえばアルコール使用障害や薬物使用障害(いまは依存症とは言わない)。これらは「間違い」ですらない。「非合法だ」「人に迷惑を掛ける」などの理由でこれらの問題を起こした人を排除してしまう場合が大多数だ。しかしこのような物質使用障害は疾患であり、回復が可能なものである。「回復なんて無理だ」と思っている人がいたとすれば、その人は「物質使用障害は回復するものである」という知識がなく、なおかつ回復した人を知らないのだろう。
回復できるものを見極めて回復させて人的損失を少なくすることは、働きやすい世の中を作っていくために極めて重要である。それには正しい知識が必要であるが、正しい知識の存在すら知らない人が世の中には多い。誠に残念なことだ。
以上の内容はアイドルであるかどうかは問わない。人間一般に通用することである。